絶望的な状況の中で、怒り、震え、ジョークを飛ばし、酒を飲み、時には涙しながら、それでも人間を信じつづけようとする著者の軽やかで、毅然とした姿勢は、不思議にも実にさわやかな読後感を与えてくれます。
同時にこれは現代版ガリバー旅行記のように不思議の国を巡る、シニカルで風刺に富んだ冒険談でもあります。一度読み始めたら、決して降りることの出来ない列車のように、あなたを実り多い旅に連れて行ってくれることでしょう。
圧巻は、ユーゴ代表チームがユーロ2000予選でクロアチア代表とアウェイで対戦した試合の描写。『悪者見参』というタイトルは、ここから来ています。かつての同胞でありながら分離独立後のクロアチアはユーゴ連邦と不倶戴天のかたき同士になってしまいました。そのクロアチアのど真ん中で、世界中から悪〜〜者の烙印を押されたユーゴ代表が戦う。勝った方だけが本戦に進めるという、これ以上ない切迫した状況。そのときストイコビッチたちはどう戦ったのか。
もうとにかく読んでください。絶対に失望はさせません。サッカー音痴の私でもこんなに多くのことを感じ取れた。サッカーを知ってる方なら、もっともっと本書を深く味わえるはずです。
なお、本書の登場〜〜人物はほとんどすべて「なんとかビッチ」で覚えにくいので、巻末の登場人物一覧をしっかり活用してください。そうすればより一層深く味わえます。〜