指輪戦争の終結は、中つ国の自由の再獲得と、指輪の破壊、人間の王国の統一、そして第三紀の終わり。「王の帰還」というタイトル通り、人間の王国が再統一され、我々人間の時代が始まる、という実に壮大な構想。
詳しくは書けませんが、私は指輪の破壊のあたりで、あまりに強烈さに数瞬の間呆然としてしまいました。
そして、トールキンが描きたかったことのかけらでも、ほんのちょっとだけ感じられた気がしました。 失うことを知らずして、人は本当に幸せになることはできないのかもしれません。あえて失う強さ、あえて運命を受け入れ、あえて犠牲を払う勇気。
今の時代、「得る」ことばかりが幸せだと考えがちです。しかし、「得る」ことばかりが幸せではないと、この物語を読んで感じました。失うことで得るものの大きさを。
そして、指輪所持者たちの運命には、彼ら自身がそれを幸せだと感じていてほしい、と祈るような気持ちになりました。何とも余韻ある、胸にしみる幕切れに、感動と同時に、寂しさが募りました。
物語の最後の最後まで知りたい人は、単行本版のみで出ている『追補編』の年表をどうぞ。指輪にかかわった仲間たちのその後が最後まで載っていて、これまた何ともしんみりとします。 物語の収束が、新たな感動とそして寂寥感と共に味わえます。
ページを開けば、またいつでも彼らに会える。 そして、どこかでまだ彼らの物語は続いている、そんな気がします。
神話の語り手としてのトールキンの才能が遺憾なく発揮された指輪物語の最終巻。
この版にしかないアラン・リーの挿し絵が素晴らしい。
アラン・リーは今回の映画でも美術を受け持っていました。