小説や物語、あらゆる芸術には、「自己満足」と「人の評価」という両面性がある。このトールキンの一連の物語は、あくまで彼の言語への愛、ただただ本業である言語学への興味、伝説や神話への愛、そして神話のないイギリスに新たな神話と伝説を作り出そうという思いから生まれながら、その余の緻密さ、リアルさと普遍性によって、多くの共感を呼んだ、という、最も幸せな運命をたどったものだ。
最近の、現実っぽい話でなければ何でも ”ファンタジー”と呼ばれてしまう傾向の中では、”ファンタジーの原点”(事実だが)と呼ばれることは却って誤解を招きそうなのは残念だ。しかし、『指輪物語』は、小説の域を超えた伝説であり、存在したかもしれない歴史の記録とさえいえる傑作。
追補編も、この本でしか読めないストーリーや資料が詰まった、必見の一冊。
そして、『指輪物語』で中つ国から帰りたくなくなった人は、未読なら『ホビットの冒険』『シルマリルの物語』を。すると、あらためて『指輪物語』で語られる指輪戦争の意義が明確になり、慄然とさえする。