この本を読むと、自分がいかに日本の政府や政策について知らないか気づかされ、愕然とする。とりわけ外務省という国際関係を司る省で、本当にこれが民主主義・平和の理念をもった国の政策かとあきれかえるような事例に驚く。
しかしこの本は、外務省の不正の暴露が目的ではない。より重要な問題は、外務省の不正を可!能にしている体制そのものであり、その体制を支えている外交姿勢であるはずなのだが、そのことについて、学会もジャーナリズムもほとんど議論しようとしていない。当然、一般市民である私達は何も知らされないままだ。だからこそ、外務省を「問われなかった“聖域”」と呼ぶ本書の副題は重要な意味を持つ。
著者の河辺氏は、現在愛知大学助教授だが、独自に国連研究をしてきた経歴を持つ。国内外の記事はもとより、国際会議や記者会見などの記録を収集・分析した情報は信頼性が高い。また、彼自身の意見はいかなる団体や組織にも制約されない。私達が触れる外務省関連の情報が(好意的であれ批判的であれ)政府関係者からもたらされるものがほとんどであることを思えば、この本はまさに「聖域」として閉じられ!ていた世界に客観的にメスを入れる貴重な一冊である。
国際問題や法律・政治などに興味がなくても、自分の意見をもつための立脚点を見出すために、いろんな立場の人にぜひ読んでほしい一冊である。
ここ十年の世界変動と日本外交の漂流にもかかわらず行革会議でも素通りされた外務省について、国連・安保条約・アメリカへの態度に着目して批判的分析をおこなう。ついでに、眠る野党、見当違いな朝日、沈黙する学者を糾弾。
高官の異動が詳述され、また皮肉・論難・断定的表現・反復が多いために、単なる暴露本・アジ本に近いところもあるが、機構改編・政策文書・当局者発言・機関哲学を詳しく検討しているところは高得点。
鈴木宗男疑惑や、外務省職員巨額横領事件では、けっきょく報道側は問題を個々人の倫理に矮小化してしまったが、問題は実は日本の外交路線につながるものであった。《アメリカ追従でしかない安保理常任理事国入りのために、外国要人の「接待」に巨費!投じる外務省》という著者の構図は、賛同するにしろしないにしろ、既存の報道論調・外務省暴露本とは一線を画する建設的論争をもたらすことができるといえよう。必読の書である。