ヒップホップに関連するテーマを詳細に挙げて(政治、ドラッグ、ビジネス、バスケ、ビデオ、ラップの品性…)、それらをチャプターごとに考察していく筆さばきは見事なものだ。原書刊行が98年だから、70年代から90年代にかけてのヒップホップトレンド(UKのトリップホップまで!)の推移についての突っ込んだ理解を得ることが出来る。
ヒップホップジャーナリズムにありがちな、「白人」「ウェッサイ」への偏見や、過剰なオールドスクール賛美など全く無い、明晰でフェアでフェミニンな視点からなされる思索がとても清々しい。中学生の英文和訳のような翻訳が玉にキズだが、充分に素晴らしい書物だ。
注)訳書では、著者がエミネム登場後のシーンの概観を語ったインタビューが付されている。
小さな街角で生まれたHIPHOPはなぜHIPHOPのまま成熟することが出来たのか、何がHIPHOPをHIPHOPたらしめたのか…
アメリカの抱えた様々な問題をHIPHOPというフィルターを通して見ることで分かりやすく、深く理解できるだろう。
白人でありながらHIPHOPを長年追ってきたという著者の文章とHIPHOP事情に詳しい訳者の仕事が非常によく噛み合っていて、
HIPHOPファンはもちろん過去の音源を追うDJ諸氏や異文化研究を目的とす人にも非常に読み応えのある本に仕上がっている。