それにわりといい奴で,育ての親に迷惑をかけたくないために,黙って旅立つ子供心などは,彼がこれから合う運命を思うと,悲劇を倍増します。
罪の意識のため,自ら目を潰す彼の良心は,本物だったはずなのに,どうしてこんなことになってしまったのか,と思わずにはいられません。
そこらへんの経緯は,ギリシャ神話などを調べると載っていますが,もとを辿れば父親のせいなんですから,憎んでもいいんじゃないかな,とオイディプスには同情的になります。
凡人の頭では,予言者がいらんこと言わなければ,みんな幸せに暮らせたんじゃ,などと思ってしまいますが,神の思慮は予言すらも凌駕しているということなんでしょうか。
一方で、本書の解説は大変参考になります。アリストテレス『詩学』による標準的な説明やプルタルコスの記事の引用、ホメロスに基づく伝説の検証や、アイスキュロスの『テーバイ攻めの七将』から『オイディプス』の失われた三部作の全貌を推測するあたりは、とても示唆に富んでいて一読の価値があります。