こんなもの、作者と同じレベルで楽しもうと思ったら少なくとも組織神学と言語学と文学と哲学と歴史学で博士課程レベル以上の知識が必要である(作者の紹介に出てくる「記号論」というのは正確にはソシュールやパースが切り開いた構造主義記号論(学)のことで、研究領域というよりは人文科学全体に影響を及ぼしている研究手法なのだ)。そんな知識がある人間がいったいどれだけ居るだろうか。本作について知識人も色々と書いているが、大丈夫。彼らだってきっと本作の全てを堪能しつくしたはずはない。作者に比肩するような人文系知識人など鉦や太鼓で探しても、世界中に1万人もいない。ならば、自分に出来る範囲で楽しめば良いのだ。
本作が売れたのは、単純に面白かったからで、それは上記の有象無象をまったく知らなくても堪能できるのである。安心してお買い求め下さい。上質の推理小説。その先は色々と勉強をするたびに「ああ、あれはこういう意味だったのか!」と一生かけて気づいていけば良いのです。