中国や韓国での反日運動を議論すると、マクロな政治の議論が中心になり勝ちですが、こうした割に常識的で積極的に歴史に関わっていこうとする視点から実際に人に話を聞き、遺物を見、それを評価する作業を加えることによって議論が立体的になるような気がします。四年間に渡る大日本帝国の痕跡をたどり、それらに思いをめぐらせ、その広さとともに「現実の豊饒さ」をともに感じ取れることがこの本を読んだ成果なのだと思います。
それなりの調査があったことを伺わせる歴史叙述とあわせて、中国に残され孤児となったおばあさんに帰国後、手紙を書いて日本の親族を調べる手助けをしようとしたり、ミクロネシアのガイドのおじさんに大好きなハーモニカを送ったりするエピソードなど(嫌味なく語られること)は、著者の正直で誠実な姿勢を示しています。やや浅薄な感はあるものの好著、です。