氏のように物を正しい角度または多面的な角度から見れる人間になりたい。
きっかけにどうぞ。私は人生変わりました。
調子のいい広報車についダマされて新車を買ってしまった自動車評論家の福野氏は、あまりの出力の差にアタマに来て、知り合いのエンジン屋「ユウジ」に頼んで、広報車と福野氏所有のクルマをバラす。しかし、広報車のエンジンは「ノーマル」というのがユウジの答えだった。なぜだ、そんなハズはない。ゼロヨンで1秒は違うワケはなぜなんだと問いただす福野氏。そのワケは…。
残留応力で歪んだ鋳鉄が、歪み戻りするまで待って芯を出したクランクシャフトやブロックを使っているからだという。つまり、徹底的に設計図通りの「ノーマル」なエンジンを積んでいたわけだ。市販の福野氏のピストンリングの外径のバラつきは12/100mmあったのに対し、広報車は5/100mmしかバラつきがなく、重さも均一だった。
福野氏だけでなく読者も「徹底的にバラつきがない部品を使っているから20馬力もの差が出るのか」と小ざかしく理解したつもりになった時、ユウジはこう一喝する。エンジンは「何百もの部品が精密に複雑に噛み合わさってお互いスレ合って、キシミ合って、そいつで動いている精密機械、精密すぎて生き物みたいなったまった機械なのよ」「お前らド素人はエンジンってのがどういうもんか知りもしねえくせに、圧縮比だバルブタイミングがバルブリフトが何だかすぐぬかしやがって、うるせえってんだよ」「エンジンをなめんじゃねってんだよ」と(pp.18-19をアルンジ)。
短いエピソードなのに、謎が謎を呼び、正解かと思ったさきに、さらに奥深い世界をかいまみさせてくれる。まさに上質の読み物としかいいようのない文章だ。